デザイン経営とはデザイン思考を事業プロセスに取り込み、顧客のニーズに合ったサービスや商品を生み出すことで、イノベーションを生み出す考え方のことです。
実際にアップルやダイソンなどでも取り入れられていて、近年日本でも経済産業省や特許庁が「デザイン経営宣言」を発表したことで一般化されるようになっていきました。
この記事ではそんなデザイン経営に関して、どんな考え方なのか、どう取り入れていけば良いのかなど徹底解説していきます。
これを読めばデザイン経営に関する理解を深めることができ、企業ブランドの構築やイノベーションの創出にどのようなことが必要かわかりますよ。
デザイン経営を分かりやすく要約
デザイン経営とはデザイン思考を事業プロセスの中に組み込む考え方のこと。そしてデザイン思考とはデザイナーが制作物を生み出す時に行っている思考プロセスのことを指します。
重要なのは、デザイン思考はいわゆる良いデザイン、センスのあるデザインを生み出すわけではないということです。
市場のニーズを適切に捉えて、必要なサービスは何なのかを考察していき、それによってイノベーションを創出することができるのです。
つまりデザインする時に使われる考え方をもとに、組織の経営課題を解決することこそがデザイン経営の本来の目的と言えるでしょう。
この考え方はどんな事業・部署においても活用することが可能です。
デザイン経営のはじまり
デザイン経営の根本とも言えるデザイン思考は、アメリカのデザイン・コンサルティング会社 IDEOが初めて提唱した考えです。
この時IDEOのティム・ブラウン氏はデザイン思考を「デザイナーツールキットによって人々のニーズ、テクノロジーの可能性、そしてビジネスの成功という3つを統合する人間中心のイノベーションに対するアプローチ」だと述べています。
2000年代になるとデザイン思考が注目をされるようになっていきました。日本でも書籍などを通して広まり、2012年には慶應義塾大学でSFC デザイン思考研究会が設立、2013年には一般社団法人デザイン思考研究所(現:アイリーニ・デザイン思考センター)が設立されるなど定着をしていったのです。
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デザイン経営の定義
近年のデザイン思考の高まりを受けて、経済産業省と特許庁は2018年5月に「デザイン経営宣言」というものを発表しました。
「デザイン経営宣言」の中で、デザイン経営を「デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活用する経営」としています。
さらに、デザイン経営を行う際には以下の2つの条件が必要だと述べられています。
- 経営チームにデザイン責任者がいること
- 事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること
デザイン経営が実践されると、ブランド力の向上とイノバーション力の向上が得られるとしています。
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デザイン経営の特徴
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デザイナーが最上流から参画する
製品の開発にデザイナーが企画段階から携わり、エンジニアと協働することで顧客の視点を開発に取り入れることができます。
経営戦略だけでなく、製品の企画やサービス開発なども上流からデザイナーが関与するようにしましょう。
ウオーターフォール型からアジャイル型へ
アジャイル型とは、短期間でシステム・ソフトウェアの実装とテストを繰り返して開発を進める手法のことを指します。
今までのウオーターフォール型ではなく、エンジニアとデザイナー、マーケティング、プロジェクトマネージャーなど少人数でチームを構成し、改善を繰り返すことでより良い商品やサービスを構築することが可能になります。
デザイナーが顧客の潜在ニーズの発見を主導する
デザイナーは顧客の視点に立って、潜在的な課題を発見・掘り起こしどう解決していくかを考える必要があります。
コトバをカタチにする
デザイナーは考えをビジュアルやプロトタイプで可視化することができるため、顧客の潜在的な課題や悩みをカタチにしていくことができます。
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デザイン経営の効果
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Design Value Indexによると、デザインを重視する企業の株価はS&P 500全体と比較して10年間で2.1倍に急成長したと発表しています。
さらにBritish Design Councilは、£1のデザイン投資に対して、営業利益は£4、売上は£20、輸出額は£5増加したと発表しました。
このようにデザイン経営を取り入れることで、企業の成長が期待できます。
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デザイン経営の具体例
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アップルやダイソンはデザイン経営を実践している企業の中の1つです。しかし、1つ1つの製品のデザインを重視しているのではありません。
経営資源としてデザインを活用し、企業のブランドイメージを構築、イノベーションを生み出しているのです。
例えばアップルでは「顧客とのあらゆる接点」をデザイン。商品の存在を知ってから、商品を買いに行き、実際に利用する。その一連の場面で消費者が得る体験を丹念に作り込み顧客満足度の向上に導いたのです。
また、ダイソンはエンジニアがデザインを考える方法を取り入れています。だからこそ、その商品の機能面を意識した個性的なデザインが出来上がったのです。商品1つ1つを見てもユーザーを観察し、課題を明らかにして解決する手立てを考え実行していることがよくわかります。
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デザイン経営の課題
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しかしデザイン経営にはまだまだ課題も多く残っています。
合わせて読みたい>>【失敗しないために】デザイン経営の課題と解決方法をご紹介
経営陣の理解不足
実際にデザイン経営を始めるとなった場合に経営陣が理解不足で、うまく進められなかったという声があります。
デザインの導入は全社的な変革である以上、経営陣がいかにデザイン経営を理解して、指揮をとっていくかは重要です。
経営陣にデザイン経営を理解してもらうためには以下の解決策が有効と考えられます。
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経営層のこれまでの経験とデザイン活動をリンクし説明をする
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経営層に理解してもらえる言葉で説明をする
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経営層向けのワークショップなどを行い、デザインに対する理解を深めてもらう
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デザインの視点を持った人が経営会議に参加する
特に「デザインの視点を持った人が経営会議に参加する」に関して、デザイン責任者がデザインの視点で顧客のニーズやサービスの改善などの課題提起を行うことで、経営層にもデザインの視点を持ってもらうことが可能です。
いずれの方法にせよ、経営層と事業部門がしっかりとコミュニケーションをとり、互いに歩み寄っていくことが重要なのですね。
意識の不一致
デザインへの理解度が人によってバラバラで目的意識や方向性がずれてしまうことがあります。
このような意識の不一致を解消するためには、以下のような方法があげられます。
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デザインをコストとして捉えるのではなくブランドの価値への投資として考える
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問題解決のための活動だとデザインを捉え直す
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デザイン経営には組織のマインドセットが重要だと理解する
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業務環境の変化に対する危機感を認識する
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社内サイトを使って密に情報発信を行う
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顧客からの評価を共有する
デザイン経営の根本は会社の課題解決や顧客満足度の向上にあります。
社員が同じ目的意識を持ち、そのために何をするべきかを認識することが重要であり、そのためには双方のコミュニケーションを改善していく必要があるのです。
デザイン人材の育成・活用
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デザイン経営を実際に取り入れていきたいとなったときに、デザイナーのリソースはどのように確保していけば良いのでしょうか。ここからはデザイン人材の育成・活用について解説します。
合わせて読みたい>>【人材確保で苦戦している方へ】デザイン経営におけるデザイナーの育成方法
デザイナーは育成可能
多くの企業では、社内での勉強会や研修にてデザイナーの育成を行っています。
社内教育を行うことで、デザイナーとエンジニアを交流させることも可能です。
美大卒出なくてもOK
デザイン経営において、顧客の悩みや課題を引き出し、可視化することがデザイナーの役割のため、デザインを専門的に学んでいない人であっても可能。
実際、ソフトバンクなど多くの企業で、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が企画・開発・コミュニケーションデザインを行っています。
外部デザインリソースの活用
外部のデザイン会社と連携し、チームを構築していくことが可能です。外部のリソースを取り入れることで、新しい視点から新たな課題を発見できるなどといったメリットも期待できます。
社員のデザインマインドを向上させる
社内全体でデザイン経営とは何なのか、何を目指しているのかを共有することは、デザイン経営において重要です。
具体的には、社内メディアを活用したり、勉強会を開くなど実践していきましょう。
デザイン経営の実践
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デザイン経営の実践のためには、以下のような複数の取り組みを一体的に実践することが望ましいと言われています。
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デザイン責任者の経営チームへの参画
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事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画
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デザイン経営の推進組織の設置
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デザイン手法による顧客の潜在ニーズの発見
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アジャイル型開発プロセスの実施
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採用・人材育成
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デザインの結果指標やプロセス指標の設計を工夫
合わせて読みたい>>【複数の取り組みが重要!】デザイン経営の実践方法
まとめ
いかがでしたでしょうか。本日はアップルやダイソンなどでも取り入れられている近年注目のデザイン経営について紹介していきました。
デザイン経営は企業の意思決定の上流からデザイナーが参画し、顧客のニーズや課題を汲み取り、企業の価値向上、イノベーションの創出を行う手法でした。
デザイン経営に取り組むためにはデザイナーの存在が不可欠です。研修などで育成する方法のほか、外部のデザイン会社のリソースを活用するのも1つの方法です。
ぜひデザイン経営を取り入れて自社の価値を向上し、競合他社と差別化してみてはいかがでしょうか。