スタートアップ企業においてデザイン業務はどのように扱われているのでしょうか。
この記事では日本の未上場スタートアップ企業153件から回収したアンケートをもとに制作されたD4Vの「Design in Japanese Start-ups」の情報を参考に、スタートアップ企業におけるデザイン業務の実態について紐解いていこうと思います。
- デザイン業務を自社に取り入れていきたい方
- 自社のデザイン業務を改善したいと思っている方
- スタートアップ企業の方
- デザイン経営に興味がある方
これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばスタートアップ企業におけるデザイン業務の現状が丸わかりですよ。
日本のスタートアップ企業の約半分がデザイン業務を内製化
デザイナーを一人以上雇用し、デザイン業務の内製化を行なっている企業は、調査したスタートアップ企業全体の57%と約半数に及びます。
残りの43%は業務委託などでデザイン業務を回しています。
しかし業務委託にてデザイナーを雇用すると、コミュニケーション面での連携が取りづらかったり、知識がストックされづらいなどといったデメリットが出てきてしまいます。
またコストの面から見ても、デザイン業務は内製化する方が良いと言えるでしょう。
スタートアップにおいて、デザイナーの貢献はブランディングとUI/UXが中心で戦略には噛めていない
スタートアップ企業のデザイナーが関わっている業務領域に関して調査を行なったところ、ブランディング、UX・UIデザインを上げる企業が90%を超えました。
その一方で、プロダクト戦略や経営戦略といったビジネスのより上流にデザイナーが貢献している企業は少ないことがわかりました。
アメリカのスタートアップでは役職や経験のレベルによらず、デザイナーがプロジェクト初期の課題発見と戦略策定に関わり貢献できる機会が高まっています。
デザインがスタートアップにもたらす効果に関しては認知されている
上記の通り、スタートアップの起業家の中でデザインがもたらすポジティブな効果はしっかりと認知されています。
特に「プロダクトのユーザビリティを向上させる」「ブランド価値を向上させる」という意見が多く、続いて「顧客満足度を向上させる」「プロダクト開発・改善のスピードを上げる」といった意見がありました。
CDOの在籍率もまだまだ低い現状
CDOとはChief Design Officerの頭文字で、最高デザイン責任者のことを指します。
CDOは経営推進のためのデザイン戦略推進や採用教育なども含めた投資の計画、組織内のデザイン文化の構築などの職務を行います。
そんなCDOが在籍する企業はスタートアップ企業全体の15%ほどです。
CDOが担う役割が曖昧であり、その重要性が経営層になかなか伝わりづらいといった問題があるのが現状です。
実際、スタートアップ経営者にデザインにおける悩みを調査すると、デザインにもっと投資をした方がいいような直接的な印象はあるものの、定量的あるいは事実に基づく説明が難しいため、優先順位を上げることができないなどといった声がありました。
こうした課題を解決するために、経営におけるデザイナーとしての役割を自社できちんと定義し、成果をしっかりと経営陣に伝える姿勢や工夫が求められます。
スタートアップ企業におけるデザインのこれから
アメリカにおいてデザインは経営にすでに馴染んでいて、あえて「デザイン思考」などと呼ぶことは少なくなっているそうです。
企業の提供価値や顧客エンゲージメント、拡大できる潜在市場などデザインに取り組む過程や結果と紐付けて語られることが多かった項目が、今では一般的なキーワードとなっています。
手段としてのデザインよりもビジネス上の帰結が議論の中心になっていて、それだけデザインが経営に溶け込まれていることがわかります。
まとめ
いかがでしたか。本日はスタートアップ企業におけるデザイン業務の実態に関して、D4Vの「Design in Japanese Start-ups」の調査をもとに解説をしていきました。
デザイン業務を内製化、そのポジティブな効果に関して認知しているスタートアップ企業が多いにも関わらず、デザインを経営に取り入れている企業・CDOを配置している企業はまだまだ少ないことがわかりました。
そこには経営層への認知や理解させることへの難しさなどがあるかと思います。それはデザイン業務がどこまでの範囲を担うのか、CDOの役割が企業によってバラバラであることも原因の1つと言えるでしょう。
そこで、自社でのCDOの役割をしっかりと定義し、経営層にデザイン経営がもたらす効果をしっかりと伝えていくことが重要なのです。